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ARISE#04 - NEW REALITIES:新たな現実

March 31, 2024

ARISE#04 - NEW REALITIES:新たな現実

本稿は、2023年5月20日に開催された対話イベント「NEW REALITIES:新たな現実(ニュー・リアリティーズ)」当日の模様をダイジェストにまとめたものです。

「NEW REALITIES:新たな現実」は、2019年に株式会社MESON(メザン)が発足させたXRコミュニティ「ARISE(アライズ)」が主催する4回目のイベントとして開催されました。企画協力には株式会社博報堂が設⽴した、未来創造の技術としてのクリエイティビティを研究・開発し、社会実験していく研究機関「UNIVERSITY of CREATIVITY(ユニバーシティ・オブ・クリエイティビティ)」(以下UoC)に参加いただきました。業界や業種はもちろん、年齢、性別、国籍を問わず、広く未来について語り合う対話イベントとなりました。

対話イベント「NEW REALITIES:新たな現実」

対話イベント「NEW REALITIES:新たな現実」は、空間コンピューティングが社会実装された未来について考える対話イベントとして企画されました。年齢や性別を問わず、多様な視点を通して描かれる未来のランドスケープ(風景)、ノーション(考え)、シングス(事象)を、1日の対話を通して思考、想像し、その解像度を高めていくイベントとなりました。空間コンピューティングやその関連領域の言葉に触れたことのない人でも対話に参加できる、オープン・ダイアローグイベントとなりました。

イベントは前後半で構成されました。前半は参加者約30名と一緒に、空間コンピューティングと深い関わりを持つ4つのテーマおよび各テーマに紐づく3つのトピックワードをお題に、わたしたちはどのような「新たな現実」を迎えるのか、未来の生活を考えるワークショップを実施しました。1テーマ当たり6名、1トピックワード当たり2名ずつ参加者がアサインされ、お題について考えていきました。

下記はテーマ一覧です(括弧内は各テーマを具体的に考えるための3つのトピックワード)。

  1. NEW IDENTITY:新しいわたし(中身・外身・表現)
  2. NEW PRODUCTION:うつしと真実の造形哲学(都市・クラフト・アーカイブ)
  3. NEW BELIEF:機械と仮想が⽣み出すシン -信- デザイン(信憑・信⽤・信仰)
  4. NEW HUMANITY:計算機時代のヒューマニティ進化論(働く・教育・恋愛)
カラーの付いたマスコットは参加者、白は運営ファシリテーター、黒がカタリスト

イベント後半では合計約100名の参加者(オンラインを含む)と一緒に、トークセッションを実施。トークセッションでは、前半のワークショップ内で完成させたアイデア付箋ボードの内容をもとに、テーマを担当した参加者と、トークセッションのために呼ばれたカタリスト(ゲスト登壇者の総称/「触媒」という意味)が、輪を作るように座り、対話を繰り広げながら「新たな現実」を考えていきました。

「Mandala」 — 越領域な対話を目指して

本イベントの会場となったのは、赤坂にある「UoC Tokyo Campus」。同キャンパス内に設置されている、世代や専門性を超えて車座で対話を行うための空間「Mandala(マンダラ)」がメイン会場となりました。

Mandalaへ入場するには、全員が靴を脱ぐ必要があります。誰もが持つ「装い」を1つ置き去りにすることで、対等に話し合いをする体験へと入り込んでいく導線設計になっています。

Mandalaは対話を促進するためのユニークな車座状の設計になっています。従来のイベントでは、カタリストは客席を見下ろしながら発言する空間設計になっていますが、Mandalaでは最前列の席が最も下の位置に来るようになっています。後方席に座るほど高い位置に座る、一般的なイベント空間とは逆位置の関係になっており、誰もが全方位から対話に参加しやすい空気感を演出しています。

イベント開始 — 約10時間のワンデイ対話へ 

23階の会場階に着くと、キービジュアルの看板が迎えます。洗練された議論ではなく、未研な対話を積み重ねながら未来を描くワンデイイベントを演出するため、クラフト感を重視した、木製板に直接ポスターを貼り付けたデザインになっています。

参加者は全員靴を脱いでMandalaへと集います。開場時間は11AM頃。アフターパーティーも入れると9PMまである、10時間のビッグイベントの始まりです。

事前に参加者は希望するテーマ別に席が決められています。輪を囲むように6-7名の参加者でワークショップを行う座組になっています。

セッション開始までの待ち時間、Mandala上で楽しめるオリジナルARアプリ「WelcomeAR」を提供しました。参加者皆さんの思考する姿や、お互いの考えを知り、未知の発見によってそれぞれの「新たな現実」があらわになる1日を、ARで表現したアプリを楽しんでいただきました。下記リンクよりご自宅でも再現いただけます。

イベントのキービジュアルに採用されている、色とりどりの球体。参加者一人ひとりの思考が現され、衝突、錬磨されていき、最終的には新たな「まなざし」を獲得して飛び跳ねていく様子がARで表現されています。

【イベント前半】ChatGPTを活用した「フォアキャストワークショップ」

いよいよイベントの開始です。

ARISEプロデューサー 福家隆

イントロダクションとして、対話イベント「NEW REALITIES:新たな現実」の全体統括を務めた福家隆より、本日の流れが紹介されました。前半ワークショップと後半トークセッションの目的が話されました。

主催MESON代表 小林佑樹

続けてARISEの主催企業「MESON」の代表である小林佑樹から、イベント趣意の説明がありました。MESONのパーパスである「まなざしの拡張」をする場所として、「NEW REALITIES:新たな現実」が企画・開催された旨が共有されました。

イントロダクションが終わったら、早速ワークショップの開始です。まずは一人ひとりがワークショップ中に使用するあだ名を、ChatGPTの提案を聞きながら1つ選びます。経歴や知識を振り回すことなく、誰もがフラットな立場から対話をする場を形成するため、相手について知っていることはあだ名だけの状態にします。

あだ名が決まったらチーム内でシェア。スマイルボールを手にした人が、最近のハッピーなエピソードと一緒に、当日使うあだ名を伝えて自己紹介します。

ここから本格的にワークショップに入ります。テーマが4つ、そしてテーマを深掘るためのトピックワードが12ほど与えられています。それぞれのトピックワードに対して参加者2〜3名がグループになって担当します。

「1. 調べる」「2. 膨らます」「3. 投げかける」「4. 対話する」の4ステップを踏みながら、トピックワードおよびテーマ全体に関する「新たな現実」を探る1日の始まりです。

生活者視点で対話が生まれるように、各トピックワードはテクノロジーを想起させることのない12のワードで揃えられました — 中身・外身・表現・都市・クラフト・アーカイブ・信憑・信⽤・信仰・働く・教育・恋愛。また、各トピックワードの本質をあらゆる角度から考えていくため、オープンクエスチョン形式の「〇〇ってどうなるだろう?」でワークのきっかけとなる発問表現を統一しています。

最初のステップ「1. 調べる」では、ChatGPTと対話しながら、各トピックワードの意味、意義、歴史、哲学、世界観などを、さまざまな角度から探ります。気になったキーワードを付箋にメモをします。

ファシリテーターもサポートしながら、付箋への書き起こしを行います。とにかく数を出していき、各トピックワードの背景感を把握します。

次のステップ「2. 膨らます」では、書き出した付箋を一度アイデアボードに全て貼り出し、他のチームメンバーに向けて担当者が発表。意見交換、発話をしながら、「こんな未来がやってくる」「新しいキーワードが思いついた」のようなインスピレーションをどんどん挙げていきます。

イベント前半のワークショップ、最後のステップは「3. 投げかける」。ここまで考えた内容をチームでまとめて、未来に投げかける問いの形に収束させました。抽出された問いは、後半のトークセッションに参加されるカタリストとの対話の題材として使われます。カタリストに直接問いを投げかけられる機会ということもあり、ワークショップ終了間際まで対話は加熱しました。

【イベント後半】「新たな現実」を共に語り合うトークセッション

ランチ休憩を挟んだら、イベント後半のトークセッションへ。ワークショップで扱った4つのテーマに関してそれぞれ1時間ずつ、カタリストを呼んだトークセッションが設けられています。「4. 対話する」のステップに該当するのがこのトークセッションです。後半からは会場およびオンライン参加枠で約70名が新たに参加し、合計100名で対話をする場になりました。

改めて、イベント全体統括を務めた福家より、今回のイベント趣意と登壇者とオーディエンスの垣根を超え、全員が対話の参加者であるというメッセージが伝えられました。また、対話を気持ちよく行い、全員参加できる環境を整えるため、5つの「セーフティー」が発表されました(上スライド記載)。

各テーマセッション別のカタリストは、下記14名となりました。物理とデジタル世界の枠を超えて、多様な思想を持った人たちが集い、それぞれの考えを述べながら対話を積み重ね、「新たな現実」を紡いでいきます。

  1. NEW IDENTITY:新しいわたし(中身・外身・表現)
    • バーチャル美少女ねむ(メタバース文化エバンジェリスト)
    • 宝生和英(能楽師)
    • 目黒慎吾(テクノロジスト)
    • 三浦慎平(研究員)
    • 平沼英翔(テクノロジスト)
  2. NEW PRODUCTION:うつしと真実の造形哲学(都市・クラフト・アーカイブ)
    • 宮廻正明(画家)
    • 赤木謙太(デジタルファッションデザイナー)
    • 沼倉正吾(起業家)
  3. NEW BELIEF:機械と仮想が⽣み出すシン -信- デザイン(信憑・信⽤・信仰)
    • 佐々木俊尚(ジャーナリスト)
    • 堀江利昌(僧侶、法律家)
    • 関真也(弁護士)
  4. NEW HUMANITY:計算機時代のヒューマニティ進化論(働く・教育・恋愛)
    • 井口尊仁(連続起業家)
    • 近藤顕彦(初音ミクと結婚式を挙げた人)
    • 山本尚毅(ラーニングデザイナー)

最初のトークセッションは「NEW IDENTITY:新しいわたし」。中身・外身・表現の3つのトピックワードを中心に対話が繰り広げられました。能楽師の宝生和英さんや、アバター参加のバーチャル美少女ねむさんらに参加いただき、物理とデジタル世界を横断した対話の場となりました。

アバター参加いただいたバーチャル美少女ねむさん
(写真右)能楽師の宝生和英さん

なお、「NEW IDENTITY:新しいわたし」のトークセッションは、MESONと博報堂DYホールディングスが共同で発足した、生活者発想でメタバースおよび空間コンピューティング領域における研究調査・情報発信を行うラボ「Helix Lab(ヘリックス・ラボ)」とのタイアップ企画として開催されました。

続いてのトークセッションは「NEW PRODUCTION:うつしと真実の造形哲学」。都市・クラフト・アーカイブの3つのトピックワードを中心に対話が繰り広げられました。

画家(東京藝術大学名誉教授)の宮廻正明さん
宮廻さんにお持ちいただいたゴッホ『ひまわり』のクローン絵画

クローン文化財を研究開発されている宮廻正明さんに、ゴッホの『ひまわり』のクローン文化財をご持参いただきました。本物そっくりの『ひまわり』を実際に手に触れられる体験が提供され、会場参加の皆さんはその完成度に驚いていました。

3つ目のトークセッションは「NEW BELIEF:機械と仮想が⽣み出すシン -信- デザイン」でした。信憑・信⽤・信仰の3つのトピックワードを中心に対話が繰り広げられました。

弁護士から僧侶になられた堀江利昌氏

僧侶の堀江利昌さんに参加していただき、宗教家の観点から語られるAIとの未来について対話しました。

最後のトークセッションは「NEW HUMANITY:計算機時代のヒューマニティ進化論」でした。働く・教育・恋愛の3つのトピックワードを中心に対話が繰り広げられました。

(写真中央)近藤顕彦氏 (写真右):初音ミク

初音ミクと結婚式を挙げた近藤顕彦さんをお招きし、恋愛の対象がどう変わっていくのかなどについて対話しました。

2つのクリエイティブアウトプット

1. NEW IDENTITY:新しいわたし(中身・外身・表現)のアイデアボード
2. NEW PRODUCTION:うつしと真実の造形哲学(都市・クラフト・アーカイブ)のアイデアボード

今回は業界内のクローズドなイベントではなく、空間コンピューティングに少しでも興味があったり、わたしたちの未来がどう紡がれていくのかを考えるのが好きな人が、越領域に集うオープンなイベントとして開催されました。本イベントに参加すること自体が、NEW REALITIESを志向したアウトプットに繋がり、誰もが新たな現実へ向けた最初の一歩を踏み出せる参加型クリエイティブアクションイベントの場となることを目指しました。

3. NEW BELIEF:機械と仮想が⽣み出すシン -信- デザイン(信憑・信⽤・信仰)のアイデアボード
4. NEW HUMANITY:計算機時代のヒューマニティ進化論(働く・教育・恋愛)のアイデアボード

そこで、1日を通じて発散されたアウトプット(アイデア付箋)を、対話というクリエイティブ行為の結晶としてボードにまとめ、イベント参加した全員のクレジットとして扱われる設計にしました。また、付箋アウトプットの情報は誰でも自由に扱える、人類の共有資産という位置付けにしました。

LAMIIのイメージ像

加えて、本イベントでは、セッション中の会場音声とイベント専用Slackチャンネルに投稿されたテキストコメントを収録、学習させて出来た対話型AI「LAMII(ラミー)」を生成し、実際にAIとの対話を行う実証実験も行われました。OpenAIのAPIを利用して、ChatGPTのようにテキストチャット形式でイベント内容に基づいた返答をしてくれます。LAMIIは対話という最も普遍的な手法によって、イベント参加者全員によって紡がれたクリエイティブアウトプットの1つとなりました。

アフターパーティー

全セッション終了後はネオアジアをテーマにしたアフターパーティーが催されました。配布されたケータリングには中華料理が並びます。

アフターパーティーでは、イベントのために開発をした、もう1つのARアプリがお披露目されました。Meta Quest Proを使って楽しめるアプリとなっています。

当日、参加者のみなさんに書き込んでいただいた感想文が、天井を吹き抜ける文字柱として宙を舞う演出になっています。ランタンが飛び交い、ここにもネオアジアな雰囲気が醸し出されています。博報堂DYホールディングスと共同で企画開発したアプリ「Spatial Message」をベースに開発されました。

ネットワーキングの時間は続きます。

対話に参加した感想などについてラフに意見が交わされます。

UoCの会場にもとから備えられているインスタレーションが場の雰囲気を掻き立てます。

11AMから9PMまで、10時間の長時間イベントでしたが、最後まで参加者の多くの方に残っていただきました。

五感をフル活用しながら、参加者全員が一体となって「NEW REALITIES:新たな現実」を考えた、あっという間の1日でした。 越領域に集まった同志が、新たな現実を紡ぎ上げる出会いを1つでも生み出せたのではないでしょうか。

ダイジェストムービー

執筆・編集:福家 隆
写真:二上大志郎、柴山あかね(株式会社kusuguru)
映像:田川紘輝、大木賢(nando株式会社)

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